トンカツは人体に危険!一流アスリートは魚食だった!子供の知能発達も促進

近年、スポーツ栄養学の研究が進み、栄養補給やケガの予防、疲労回復のための食事の仕方、メニュー開発がなされ、一流アスリートは食と運動をひとつとして捉えています。

 油に関心を持ってすごしていると、食全般の情報も入ってくるため、アスリートの食を知る機会も多くあります。

 昨年、プロ野球オリックス・バファローズ選手会長伊藤光捕手が契約交渉の場で、試合終了後に球団が用意している食事について「菓子パンが多い。栄養は大丈夫なのか。全員に行き届いていないこともある」と球団に問題提起しました。今季からおにぎりやバナナなどに改善されたようですが、仮にもトップアスリート集団のプロ野球選手とそれを管理する球団が、この程度の知識しかないのかと唖然としました。
パフォーマンス向上のカギはオメガ3

 一方で、こんな報道もありました。独ブンデスリーガボルシア・ドルトムントのフィジカルトレーナーであるライナー・シュレイ氏は、ただ体を鍛えるだけでは不十分で、いかに栄養を取り、いかに回復を早めるかまでが仕事の範囲になっているといい、そのための具体的な栄養指導を選手に行っています。

 そのカギとなるのが“油”です。特に、炎症を抑える効果のある油といわれる脂肪酸&limit=20">オメガ3脂肪酸の摂取です。シュレイ氏が勧めているのは、魚油に含まれるオメガ3脂肪酸のDHAEPAを摂るための魚食と、もうひとつのオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸を多く含むアマニ油やエゴマ油を日常的に摂ることです。同氏は、このような食事をすることで「柔軟性が増して負荷への耐性が強くなる」と述べています。つまり、持久力向上とケガの予防につながるのです。

 これはアルベルト・ザッケローニ氏が監督を務めた2010~14年のサッカー日本代表の食事にも取り入れられていて、オメガ3脂肪酸を摂って血液をサラサラにすることにより、体の隅々まで血液を行き渡らせ、傷んだ筋肉の回復を早めるためにサバやイワシ、サーモンなどが毎食出ていたようです。

 個人の判断でオメガ3脂肪酸を食事に取り入れているアスリートも沢山います。スペイン、リーガ・エスパニョーラFCバルセロナに所属するサッカー界のスーパースター、リオネル・メッシ選手が、ケガ予防のため魚食にしたのは09年のことです。また、米メジャーリーグニューヨーク・ヤンキース田中将大投手の夫人である里田まいさんも、早くからアマニ油を愛用しています。女子ゴルフの上田桃子選手は、アメリカツアーでトッププロの選手たちが集中力維持のために食生活にも気を配っているのを見習って、自身の食を見直し、栄養学を学びオメガ3脂肪酸を取り入れるようになったそうです。

リノール酸を減らすことも重要

 油の使い方のもうひとつのポイントは、オメガ6脂肪酸(リノール酸)の油を減らすことです。リノール酸には、炎症を促進する働きがあるからです。前出のシュレイ氏も、サラダ油やひまわり油、コーン油の摂取を禁止しています。特に試合前日は、それらで揚げたトンカツや天ぷら、また脂の多い肉類もNGで、魚を食べるべきだとしています。日本では、「試合に勝つ」というゲン担ぎとしてトンカツやカツ丼を食べ、それによってスタミナもつくと思われていますが、実は大間違いなのです。昨年開催されたラグビーワールドカップにおける活躍で注目されたラグビー日本代表の食事でも、トンカツは禁止されていました。一流のアスリートは、最新の情報と正しい油の使い方を取り入れた食生活をしています。菓子パンを供給していたオリックスは、見習うべきでしょう。
アスリート食は子供にも有意

 適度な炭水化物、野菜、魚、そしてオメガ3脂肪酸のアマニ油、えごま油を基本とするアスリート食は、成長期の子供にも最適です。近頃は幼少期からのスポーツが盛んですが、ケガの予防だけでなくオメガ3脂肪酸が豊富な食は心身の成長に重要な役割を果たします。たとえば、DHAは知能の発達にも効果を発揮します。魚が苦手な子供が多いようですが、骨も食べられるサバ、サンマ、イワシの缶詰にはDHAEPAがたっぷり含まれています。サバの水煮缶1缶(190g)にはDHAEPAが3~8gも含まれているため、家族4人で食べても充分なオメガ3脂肪酸が摂れます。

 もはや食と運動をひとつのものとして取り組むのがアスリートの常識です。ゲン担ぎのトンカツより、オメガ3脂肪酸を多く含むサバ缶がアスリート食の本流といえます。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)