夫婦で月額年金支給10.8万!民間老人ホームは一人月25万、公営は50万人待機

文=神樹兵輔/マネーコンサルタント

社会保障体制崩壊の危機に政治は無策・無頓着
 本連載の前回記事『貧乏の元凶、人生の3大無駄遣い! 5千万円の資産形成は簡単! 住宅ローンや保険はNG!』で、これからの老後環境がますます厳しいものになることを紹介し、家族でコングロマリット(複合型)収入確保へとシフトしておかないと、老後の資産形成もおぼつかないというリスクを解説しました(詳しくは拙著『老後に5000万円が残るお金の話』<ワニブックス刊>より)。

 今から44年後の2060年には、日本では65歳以上高齢者の人口に占める比率が4割を超えています(現行は26%)。ちょうど現在20代がこの層へ仲間入りをする頃で、現在30代以上の方が75歳以上の後期高齢者へと加わる頃です。

 その頃には、社会保障体制も大きく崩れていることが予想されるのです。おそらく年金の支給開始年齢も、現行の65歳支給から70歳もしくは75歳へと延期され、給付額も現行平均の19万円(夫がサラリーマンで妻が専業主婦だった65歳以上高齢者夫婦の合計額)が3~5割減らされて9~13万円ぐらいになっていることでしょう。

 医療費も現行の3割負担が5~6割負担が当たり前となり、介護保険も現行の1割負担が4~5割負担となっていることでしょう。最後のセーフティネットである生活保護にしても、現行の半分以下の支給条件なら御の字といえるぐらいになっているはずです。

 過去20数年、少子高齢化が云々されてきて、現役世代と高齢者世代の人口バランスが崩れていく実情を、なんの手も打たずに放置してきたのですから、日本国民は今後ますます厳しい現実を突きつけられます。

 こういう現実に、多くの現役政治家は見て見ぬフリをしてきました。近頃、「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログに慌てふためいて、今夏予定の参院選を前に安倍政権は、場当たり的な弥縫策として保育基準緩和・労働強化と保育士の月額給与6000円増だけ打ち出しましたが、選挙で当選しつづけ自己保身することだけが目的と化しているような国会議員だらけの政治環境では、抜本的な改革は望めません。

 安倍政権にとっても「憲法9条改正」だけが悲願の主力政策でしょうから、社会保障の問題などは貧乏な国民が喘ぐだけのことなので、適当に先送りしていきたいのが本音でしょう。 歴代政権は、そうやって高度成長期以来、バラマキの借金財政を続け、自分たち一族さえよければよい――という世襲のお坊ちゃま、お嬢ちゃまたちが政権中枢を担ってきたのですから、これも致し方なく、国民はいい面の皮だったというだけなのです。

無届け介護ハウスが急増している理由

 さて、1月に放送されたテレビ番組『クローズアップ現代+』(NHK)でも取り上げられていましたが、近頃、一軒家にベッドを並べただけの、あるいは畳の上に布団を敷いただけの「無届け介護ハウス」が激増しています。

 なぜでしょうか。1に儲かるからで、2に潤沢なニーズがあるからです。ニュースなどで報じられてからは、異業種業界からの参入も相次いでいます。無届けなのは、老人福祉施設としての厳しい規制を満たしていないからです。

 しかもニーズが高いので、これまで自治体や病院からの要請で次々老人を受け入れてきても、行政も見て見ぬフリで、取り締まりがされていなかったからなのです。東京・練馬区のマンションの1室で「ほほえみガーデン」を運営し、70代から90代の老人6人の介護サービスを行っていた50代の社長が、2016年初頭に初めて老人福祉法違反で逮捕されましたが、これは初のケースで稀有な例です。
 
 24時間介護が必要な老人を家族が面倒を見るのは、とても無理があります。かといって、費用が比較的安い公営の「特別養護老人ホーム」は予算が不足してこれ以上増やせないため、もはや定員いっぱいで50万人以上の待機状態にあり、とても入所できません。民間の有料老人ホームは、入所一時金のないところが増えていますが、それでも平均月額は介護保険の自己負担分も含めて、25万円前後かかります。

 前述の通り、現行の厚生年金平均受給額は夫婦で19万円です。これでは、とても夫婦の一方でさえ有料老人ホームには入れないのです。夫が自営業だった場合の夫婦合計での国民年金平均受給額は、たったの10.8万円です。これでは、絶望的でしょう。

 そこで生まれてきたのが、スプリンクラーを設置したり個室介護をしなくても老人を預かれる「無届け介護ハウス」や「無届け老人住居施設」、あるいは正規の「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」ですが、老人を囲い込んで介護報酬を丸取りする施設が横行しています。火災や感染症の蔓延による事故も報じられていますが、解決のメドは一向に立っていません。保育所の不足問題と同質の課題がここにもあるわけです。

 一般の住居に老人を預かり、ついでに訪問介護事業所も同時に起ち上げ、要介護度の認定を行うケアマネージャーを丸め込んで介護報酬の限度額いっぱいのケアプランを作成してもらえば、ものすごく儲かります。一番重篤な要介護度5なら老人本人の負担は3万円でも、介護報酬は総取りで35万円です(介護保険料半分・税金半分が原資)。

 無届け介護ハウスの住居費やサービス費用を10万円あるいは数万円に安く抑えても、介護認定された老人(毎年20~30万人ずつ増加し、14年で約600万人)さえ集めれば、あとは介護保険のケアプラン次第で儲かります。生活保護受給の老人なども大歓迎となるゆえんです。もちろん、実際の介護サービスはろくに行われていなくても、人質に取られたかたちの老人や、その家族から苦情が来ることもありません。なにしろ、行き場がないのですから。囲い込んだら老人が死ぬまで貧困ビジネスの収益に貢献するだけです。行ってもいない介護サービスで、介護報酬がタンマリ入ってきます。

貧困ビジネスを野放しにするな」だけで問題は解決しない

 儲かる貧困ビジネスゆえに、このような施設が激増し、今や2000件(在所者数1万5000人)を突破しているという推計もなされています。現在の日本人の平均寿命は男80歳、女87歳ですが、「健康寿命」は、男71歳、女74歳です。つまり平均寿命との間には、多くの人が「不健康」となり、介護が必要となる期間が内在されているといえるのです。

 現役世代と高齢世代の人口のアンバランスを放置してきたために、社会保障体制は今後もますます揺らいでいきます。「貧困ビジネスを野放しにするな」と叫ぶだけでは、老後の介護問題は解決しないのです。まずは、将来において劣悪な介護環境にお世話になりたくなければ、政治が真正面から社会保障体制の抜本的構築の問題に取り組まなくてはならないでしょう。

 老人問題は老人たちだけの問題ではありません。未来を担う若い世代こそが、喫緊の課題として、政治に対し厳しく解決を求めていく必要があるといえるのです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント

勤労世代の5人に2人は、納税で社会に貢献するどころか 稼ぎが悪くて社会のお荷物になっているという図式に

消費税増税に関する三党合意についてなど、細やかな政策上の経緯や是非は脇に起きますが、基本的には、消費税増税を行う意図というのは、一部は増え続ける社会保障費などの歳出を支えるためには増税が必要、というコンセンサスがありました。

本当に消費税を増税すれば国庫への歳入が増えるかどうかはともかく、社会全体として「このまま社会保障費が増えて国が成り立つのか」「財政は大丈夫なのか」という検討は、どこかでしっかりとしておく必要はあると思います。

財務省が発表している歳入・歳出と公債発行額の推移を示したグラフ,税収が57.6兆円で公債発行額が34.4兆円,歳出が96.7兆円となっている

もちろん、国家の経理さんの役どころである財務省は「大変だ、大変だ」と言い続けています。「いや、埋蔵金はあるのだ」とか「国家は経常収支が黒字であれば、国民が国家をファイナンスし続けられるわけだから、国家はデフォルトすることはない」などという議論は百出します。正直申し上げて、国庫が破綻するかどうかは、本当のところは誰にもわからないのだろうと思います。

しかしながら、わかりにくいマクロ経済や国家財政の話を抜きにして、国民一人ひとりが納税した金額と、実際に受けられる市民サービスの一人当たりの単価を見比べれば、その人が納めた税金で社会が本当に回せているのかがわかります。

そして、結論から先に言うならば、我が国の労働世代の5人に2人は、働いて税金を納めることで社会に対して貢献するどころか、稼ぎが悪くて社会のお荷物になっているという図式になっていることがわかります。

社会保障費を考える上で、社会で「当たり前のように受けられる」はずの公共サービスには、当然ですがコストがかかっていて、そのコストは誰かが納める税金が充てられているのだ、ということを理解する必要があるのです。
千葉市の市政サービスの見える化で、透明性と納得感の裏に…

基礎自治体がユニークな首長を戴くケースにおいては、その政治的な意識の裏づけとなるような幾つかの試みが結実し、興味深い話が複数出てくるようになりました。

たとえば、千葉市熊谷俊人さんという現職最年少当選の若き市長を選んだ結果、市政のコストの見える化が進んで、サイトで誰もが「このサービスは本来いくらで成立しているものなのか」が把握できるようになりました。ツイッターでも時々名言を吐いて暴れるなど、名物政治家の道を着々と歩んでいる面白政治家です。

で、千葉市民が納税した市民税が、千葉市の市政、公共サービスにどのように使われているのかが一目で分かるようにしたところ、他の市政でのコスト比のベンチマークが取れるようになってきました。もちろん、非公開を貫くマイウェイな自治体も多いわけなんですが、外形的に基礎自治体の「能力」が評価できるようになると、埋もれた可能性から絶望するべき未来まで、定量化できるようになります。

私は3人の男の子を養っていまして、現在6歳5歳2歳で、道路にチョークで落書きをするなど日々ろくなことをせず公共サービスのお世話になっているわんぱく三人組です。もしも、彼らが千葉市で暮らしていたのならば、部分的に支援される一人目二人目は月額3万7,091円、全額支援される三人目は15万9,467円の補助を千葉市から受けることになります。

もしも、3人とも保育園に入っていたのだとすれば、保育費について私の世帯は月間の保育料3万4,095円を支払う代わりに、月間のサービスとして23万3,649円相当の額を千葉市から受けていることになります。

この差額に見合う住民税を私が払っていれば、私は千葉市に対して税収の上で貢献する市民だという話になるわけです。控除やなんやかやありますが、この保育園のところだけで考えるならば、市民税は6%ですので、月額およそ20万円の千葉市の負担を市民税でカバーするぜとなれば年収がざっと3,991万必要だ、ということになるわけです。

興味のある人は、千葉市の市民税解説ページでも見てください。私は別に千葉市長の回し者ではありませんが、こういう試みのおかげで得られる知見もまた、多いように思うんですよね。それも、この試算は保育料だけの話で、ここにさらに消防だ警察だ上下水道だ道路橋だ国防費だといった費用が乗っかってきます。

国税庁が発表している平成24年度における身近な財政支出と国民1人あたりの負担額,警察・消防費が総額5兆949億円で国民1人あたりに換算すると約3万9955円にあたる,ゴミ処理費用が総額2兆768億円で国民1人あたりに換算すると約1万6287円,国民医療費の公費負担額が総額15兆1459億円で国民1人あたりに換算すると約11万8777円

国税地方税においては、所得税だけでなく、消費税や法人税その他の税収もありますが、国税についていうならば、全体の歳入の14%ぐらいが所得税です。

財務省が発表している一般会計税収の推移を示したグラフ,2011年時点で所得税が13.5兆円で法人税が7.8兆円で消費税が10.2兆円となっている

我が山本家は、私と家内、暴れん坊の子供3人と、介護が必要な高齢者2人、元気な高齢者2人と猫ちゃん2匹わんちゃん1匹がぶら下がって暮らしていますが、ざっと計算すると、全部を私個人の所得で世間様に迷惑をかけないように回そうとすると税引き前の年収で8,400万円ほどかかる計算になります。

ここからさらに、公共サービスに頼らない個人的な親父お袋の扶助とか、子供の送り迎えとか、わんちゃんの散歩とかといった家庭の雑事が数多降りかかってくるわけです。さらにはPTAやら地域会やら、なんかかんか役割が押し付けられて、粛々と対応していくわけであります。なんか、人生を見ていると40歳を超えてから、ずっと誰かの面倒を見ている気がします。

山本家における愚痴はともかく、法人税収の減少が今後起きるとするならば、個人納税者への負担が一層高まっていくであろうことは容易に想像がつきます。痛税感(つうぜいかん)とか、重税云々という奴ですね。まあ、税金を払いたくないという素朴な感情は誰にでもついて回るものです。一万円多く税金を払うぐらいなら、外食でうまいものでも食いたいと思うのが人情ですからね。
自立した国民になるためには、
納税を行い、地域に貢献し、子供を育み、
高齢者を可能な限り養うことが求められる

ただ、社会保障費が増大していくよという見込みの強くなっている昨今、足りない財源をこれまで国債の発行で埋めてきたツケをこれから払うことになります。つまり、今まで高度成長だ日本人の誇りだといってきたプライドを維持するための費用を、私たちや次の世代が負債として返していかなければならない年代に差し掛かったぞということです。

すなわち、社会に富を与える生産ができなくなった高齢者が多いほど、それを支える労働力も資金も必要になるけれど、稼ぎが少ない働き手が納める税収が伸び悩むと、その地域や暮らしは一気に貧しくなるぞ、ということです。

「一人当たりの平均納税額」から、「一人当たりが受けた公共サービスの平均額」を引くと、控除や相続その他の山や谷も馴らして計算するならば概ね年間230万円から、310万円程度の差が出ます。これはつまり、一般的な国民が納めている税金よりも、多くの市民サービスを受けていることになります。

ただ、言い方は悪いですが、普通にがんばって暮らしていても、所得が低く納税額が低ければ、生活しているだけで「社会のお荷物」になってしまう危険すらあります。もちろん、これらはあくまで「一人当たり」という国民全体の平均であって、高齢者が増えれば一人当たりの納税額は低くなる傾向がありますし、働いて得た賃金とは別に働き先が法人税その他を納めているわけですから、あくまでそういう試算がある、という話ですが、ひとつの参考にするべきは、公共サービスを支えられるだけの自立した国民になるためには、納税を行い、地域に貢献し、子供を育み、高齢者を可能な限り養うことが求められることになります。スーパーマンかよ。
890~920万円程度の所得があって初めて
「社会に貢献している人」「税金を納めているからと
文句を言える資格のある人」ということになってしまう

そこで、この問題を考える上で出てくるのは「担税力(たんぜいりょく)」という耳慣れないワードです。

社会的なニーズに対する政策の一部は、税制大綱(ぜいせいたいこう)という国の税金の体系の方針に色濃く現れますが、これを見ると、我が国が解決しなければならない問題が浮き彫りになってきます。『税理士法人名南経営』がまとめているサマリーは非常に良くできているので、ざっとご覧いただけると我が国の取り組むべき課題が良く理解できます。

税理士法人明南経営が公表している平成28年度税制改正大綱の概要について,法人税改革は法人実効税率の「20%台」への引き下げや法人事業税の税率引き下げと外形標準課税の拡大など,個人所得税関連では医療費控除の特例措置(セルフメディケーションの推進),消費税関連では消費税の軽減税率と適格請求書等保存方式の導入など

たとえば、国民にとっては不公正感のある法人税の引き下げは、例のパナマペーパー問題などにも見られるように大企業優遇の政策に見える一方、世界的な法人税引き下げ競争に日本が負けると、文字通り企業が納税するべき本社を海外に移転してしまったり、法人の作り出す雇用がなくなってしまいます。

ここでいう担税力とは結構主観的な概念で、別に厳格な計算式があるわけではありません。単に、社会的に「まあ、このぐらいは税金を負担して当然だろう」という線引きをしながら、不当な苦痛を感じずに日々を暮らしていくための税率ってどのくらいなんだろうね、という話であります。

ところが、普通に計算すると現在国内で行われている公共サービスがかかっている実費そのままに国民一人当たりの税負担額とするならば、過去に発行した国債などの償還を除いても890万円から920万円程度の所得がないと、国は社会を維持できないという計算になります。

法人税や固定資産税など、他にもさまざまな税金が取られていますので、一概に所得税だけの問題ではないのですが、ざっくりとした計算でもこのぐらいの所得があって初めて「社会に貢献している人」とか「税金を納めているからと文句を言える資格のある人」ということになってしまいます。それに満たない所得の人は、担税力がそもそも不足しているので、このような公共サービスを受けることで実質的な所得移転、貧富の格差解消を為されている、と判断されることになるのです。
戦後の高度成長期の蓄えをほとんど使い切った日本は、
どんどん貧しい国になっていく可能性が高く、
衰退期に入りつつある

厳しいようですが、格差問題というのはすでに納税の段階から判別できるものなのですが、それ以上に問題なのは、日本社会は戦後の高度成長期の蓄えをすでにほとんど使い切って、どんどん貧しい国になっていく可能性が高い、衰退期に入りつつあるということでもあります。

国の税制と、暮らし向きの劣化は、政治の問題でもありますし、日本社会の風土の問題でもあります。単純に言うならば、右肩上がりの経済成長に慣れ親しみ、昨日よりも良い明日が来るという保障がまったくなくなった今、社会的に富を生み出さない高齢者を政治や社会がこれ以上優遇することは難しくなるでしょう。

そうしたとき、最終的に頼ることができるものは何なのか、何かあったときに支えになる存在は何かということを、少しでも考えておいて対策を打っておくことの大事さは、噛み締めておかないといけないだろうなあと思うのです。

自分自身や家族の健康がまず第一で、そこからがんばって働いてしっかりとした稼ぎを得て、社会に貢献できる人物になるために何が必要か、不足の事態が起きたときにどのような備えがあるのかを考えておくことが肝要なのではないかと感じます。
(みんなの介護ニュース やまもといちろうゼミ)

iPS細胞10年 進む再生医療・創薬研究、ハードルも

 皮膚や血液の細胞から作れる万能細胞、iPS細胞が開発されて今年で10年。無限に増え、体の様々な種類の細胞に変化できる性質を生かし、再生医療や創薬に向けた研究が急速に進んでいる。一方、複雑な組織ほど体外で作り出すことは難しく、越えなければならないハードルも見えてきた。

■心筋、網膜…再生医療への研究進む

 大阪府吹田市にある大阪大の実験室。直径約2センチの培養皿に入った、人のiPS細胞から作ったシート状の心筋細胞を見せてもらった。シートには心筋のほか、血管をつくる細胞などが含まれている。

 容器に収められた半透明のシートを顕微鏡で拡大すると、全体が連動してリズムを刻む様子がはっきり見える。まさに「拍動」だ。心臓に貼れば、一体となって動くと見込まれている。

 澤芳樹教授(心臓血管外科)らは、このシートを虚血性心筋症など、現在は心臓移植が必要になる心臓病の患者らに使う研究を進めている。「人に使うために安全性を確認する最終段階まで来ている」

 京都大iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥教授が作り出したiPS細胞は、ES細胞のように受精卵を使う必要がないため、倫理的な問題がなく、作りやすいことから、再生医療への利用が期待されてきた。

 先頭を行くのは理化学研究所高橋政代プロジェクトリーダーのグループだ。加齢黄斑変性という目の病気で臨床研究を始め、14年には患者のiPS細胞から作った網膜の色素上皮細胞のシートを患者の目に移植した。

 移植した細胞は約12万6400個。ねらった細胞に変化し損なったiPS細胞が体に入ると腫瘍(しゅよう)になる危険があるが、今のところ異常はないという。手術を担った栗本康夫・先端医療センター病院眼科統括部長は先月、日本眼科学会総会で「安全性に関するエンドポイント(評価項目)は達成した」と強調した。

 国も全面的に支援する。iPS細胞を含む再生医療関連の今年度予算は文部科学、厚生労働、経済産業の3省合わせて約148億円。文科省は昨年、iPS細胞研究のロードマップ(工程表)を改訂し、計19の細胞や器官で、実際に患者で研究を始める目標時期を掲げた。京大が進めるパーキンソン病患者への神経細胞の移植や血小板の輸血、阪大の角膜の移植は、早ければ今年度の開始とされている。

■費用が課題、自家移植は準備に1億円

 ただ、細胞の培養や品質のチェックに膨大なコストと時間がかかる。高橋さんの1例目では、細胞の準備から移植までに1年近く、約1億円を費やしたとされ、山中さんも「(患者自身の細胞を使う)自家移植は考えていた以上に大変だ」と口にする。腫瘍化などの危険性を懸念する研究者の声も依然として強い。

 ログイン前の続きこのため、CiRAではあらかじめ品質を確認したiPS細胞を備蓄し、配るプロジェクトを開始。細胞は、多くの日本人に移植しても拒絶反応が起きにくいタイプの健康な人から提供してもらう。

 高橋さんらは2例目以降の移植にこの細胞を使う研究を準備している。高橋さんは「色素上皮なら一つの皿で何十人分も作れ、コストを減らせる。将来は普通の治療としていけるぐらいになる」と話す。

 一方、iPS細胞が国外で再生医療に広く使われるかは不透明だ。すでに欧米ではES細胞を使った研究が根付いており、加齢黄斑変性など、数十人の患者にES細胞から作った細胞による臨床応用も進んでいる。iPS細胞の研究に詳しい黒木登志夫・東京大名誉教授は「再生医療は競争が激しい。ES細胞が世界の標準になる可能性がある」と指摘する。

■創薬研究、技術確立に課題も

 再生医療への応用のほかに近年、注目を集めているのが創薬の研究だ。

 理研の六車恵子・専門職研究員らのグループはCiRAと共同で、ES細胞の研究で培ってきた大脳や小脳の組織を体外で作る技術を応用する。アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症、小脳変性症などの患者の細胞からiPS細胞を作り、脳神経に変える。

 培養皿でこの神経を調べると、患者ごとに薬に対する反応が違ったり、特定の細胞がストレスに弱かったりすることがわかった。「患者自身の脳組織を研究で使えるのは、iPS細胞ならではの手法」と六車さんは話す。

 CiRAの妻木範行教授らのグループは、遺伝子変異が原因の軟骨の難病で薬の候補を見つけた。患者のiPS細胞から作った軟骨は正常な組織に培養できなかったが、高脂血症治療薬のスタチンを加えると正常になった。

 こうした手法を使えば、薬の開発にかかる時間やコストを大幅に削れると期待される。ただ、複雑な組織になるほど体外での培養は難しく、細胞に酸素や栄養を供給し続けて成長させる仕組みも必要になる。さらに、現状では培養できた細胞や組織の多くが未熟な状態で、成熟させる方法も未確立だ。

 腎臓の組織づくりに取り組む熊本大の西中村隆一教授は「病気を調べるためには、まず正常な組織を作る必要がある。ただ、できたものがどこまで体内の状態を再現しているか確認が難しい」と指摘。マウスのiPS細胞を使い、毛包や皮脂腺など皮膚の器官をまとめて再生することに成功した理研の辻孝チームリーダーも「立体的な組織を作るには、培養技術の革新が必要だ。iPS細胞の潜在力をまだ引き出しきれていない」と話している。(阿部彰芳、今直也、野中良祐、竹石涼子)

 《iPS細胞(人工多能性幹細胞)》 無限に増やせ、体の様々な細胞に変化できる能力を持った細胞。同様に万能性を持ち、受精卵を壊して作るES細胞(胚(はい)性幹細胞)と異なり、体の細胞から作ることができる。山中伸弥・京大教授が2006年、マウスの皮膚の細胞に四つの遺伝子を働かせて作製に成功した。特定の種類に変化し終えた細胞でも受精卵に近い状態に「リセット」できることを初めて示し、07年には人でも成功した。12年にノーベル医学生理学賞に選ばれた。

アピタル:ニュース・フォーカス・科学>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/

シンメトレル・トレリーフの作用機序・特徴

シンメトレル(アマンタジン)はドパミン遊離促進薬と呼ばれるパーキンソン病治療薬だ。
パーキンソン病では脳内のドパミンが減少した状態である。ドパミン神経伝達物質の一種で、運動機能に関与するため、ドパミンが不足してしまうことにより、手足のふるえや筋肉が硬くなってしまう運動機能障害が現れるのだ。
つまり、パーキンソン病を改善するためには、脳内のドパミンが不足しないようにすることが重要であることが分かる。そのため、パーキンソン病の治療では基本的に“ドパミンの作用を強める”というアプローチを取るのだ。
ドパミンの作用を強めるには“ドパミン受容体の刺激”、“ドパミンの補充”などが挙げられるが、シンメトレル(アマンタジン)は線条体の神経終末からドパミンの遊離を促進することによって、パーキンソン病の症状を改善する薬である。
シンメトレル(アマンタジン)の特徴
・インフルエンザの治療薬としても使われる
シンメトレル(アマンタジン)はインフルエンザ治療薬としても使われる。しかし、すべてのインフルエンザに使えるわけではなく、A型インフルエンザのみに使用することができる。
一方で、インフルエンザの予防や治療のためにシンメトレル(アマンタジン)を服用中の患者が自殺をしようとしたという報告がある。そのため、精神障害のある患者などに使用する場合は注意が必要である。
・ジスキネジアに有効
レボドパやドパミンアゴニストに比べると、シンメトレル(アマンタジン)はパーキンソン病の症状を改善する作用が弱いと言われている。しかし、シンメトレル(アマンタジン)はパーキンソン病に患者によく見られるジスキネジアに効果を示すという特徴を持つ。
ジスキネジアとは自分の意思に関係なく身体が動いてしまう症状で、進行期のパーキンソン病によく見られる不随意運動である。
・腎排泄型の薬剤
シンメトレル(アマンタジン)は腎排泄型の薬剤である。そのため、透析患者への投与は禁忌となっている。また、腎機能が低下していることの多い高齢者に使用する際も注意が必要である。(週刊 薬剤師日記)
 
レリーフ(ゾニサミド)はドパミン代謝賦活薬と呼ばれるパーキンソン病治療薬だ。
レリーフ(ゾニサミド)の作用機序を理解するためには、まずはドパミンについて理解する必要がある。ドパミン神経伝達物質の一種で、運動機能に関与している。
パーキンソン病とはドパミンが不足している状態である。そのため、手足がふるえたり、筋肉が固まって動きにくくなる等の運動機能障害が現れるのだ。
ここから分かるのは、パーキンソン病ドパミンが不足した状態なので、ドパミンを補充することができればパーキンソン病の症状を改善できるということだ。
レリーフ(ゾニサミド)の詳しい作用機序については実はまだよく分かっていないのが現状だ。しかし、2つの作用機序があるのではないかと言われている。それが“MAOB阻害作作用”と“ドパミン生合成促進作用”だ。
まず、MAOB阻害作用について説明しよう。通常、ドパミンは脳へと放出され、運動機能に関する情報の伝達をし終わったあと、MAOBと呼ばれる酵素によって分解される。
その結果、この酵素によってドパミンが分解されることによって、脳内のドパミン量が徐々に減少してしまうのである。つまり、MAOBを阻害作用を持つことによってパミンの量が減らなくて済むのだ。
そして、トレリーフ(ゾニサミド)が持つもう1つの作用が“ドパミン生合成促進作用”だ。ドパミンは“チロシン⇒レボドパ⇒ドパミン”という過程を経てチ合成される。
チロシンからレボドパへの変換にはチロシン水酸化酵素と呼ばれる酵素が関与している。トレリーフ(ゾニサミド)はこのチロシン水酸化酵素を活性化し、ドパミンの生合成を促進するのである。
このようにMAOB阻害作用とドパミン生合成促進作用の2つの機序からパーキンソン病の症状改善すると言われているのが、トレリーフ(ゾニサミド)である。
◎トレリーフ(ゾニサミド)の特徴
・wearing off(ウェアリング・オフ)現象に効果的
レボドパはパーキンソン病に対する効果が高い反面、使い続けているとレボドパの効き目が少しずつ弱まってしまう。その結果、レボドパを服用していてもパーキンソン病の症状が現れてしまうのである。これをwearing off現象と呼ぶ。
レリーフ(ゾニサミド)はレボドパと併用して使用され、wearing off現象を改善することができる。
てんかんの治療薬としても使われる
レリーフの成分である“ゾニサミド”は元々てんかんの治療薬として使われていたが、パーキンソン病に伴うけいれんに使用したところ症状が改善したため、パーキンソン病の治療薬としても使われるようになった。
・レボドパ製剤と必ず併用する
レリーフ(ゾニサミド)はレボドパ製剤(マドパー、ネオドパゾール、イーシー・ドパール、メネシット、ネオドパストン)との併用が必要である。理由は簡単でトレリーフ(ゾニサミド)はレボドパの作用を増強をする薬(MAOB阻害作用)のため、単独投与しても意味がないからだ。(週刊 薬剤師日記)

コーラやノンアルコールビール、スーパーの惣菜は要注意!発がん性物質を含むカラメル色素が野放し!カップ麺も

 カラメル色素という食品添加物をご存じでしょうか。天然添加物の一種で、食品を褐色に染めるため、実に数多くの食品に使われています。コーラ、カップめ ん、インスタントラーメン、しょうゆ、ソース、めんつゆ、焼肉のたれ、カレールウ、レトルトカレー、漬け物、佃煮、菓子類、カフェオレ、ノンアルコール ビールなどの加工食品のほか、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで売られている焼き鳥、焼きそば、弁当、惣菜、惣菜パンなど多種多様に用いられて います。おそらく、ほとんどの人がなんらかの食品を通して、毎日カラメル色素を摂取していることでしょう。

 そのカラメル色素の一部には、発がん性物質が含まれているというショッキングな事実があるのです。したがって、気づかないうちに発がん性物質を体内に取 り込んでいることになるのです。今や日本人の2人に1人ががんを発病しているとされていますが、カラメル色素がそれと関係している可能性があります。

 カラメル色素には大きく4種類ありますが、それは次のようなものです。

・カラメルⅠ…デンプン分解物、糖蜜、または炭水化物を熱処理して得られたもの、あるいは酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもの。

・カラメルⅡ…デンプン分解物、糖蜜、または炭水化物に亜硫酸化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリをさらに加えて熱処理して得られたもの。

・カラメルⅢ…デンプン分解物、糖蜜、または炭水化物にアンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもの。

・カラメルⅣ…デンプン分解物、糖蜜、または炭水化物に亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を加えて、またはこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもの。

 これらのうちⅠおよびⅡと、ⅢおよびⅣには大きな違いがあります。それは、ⅢとⅣにはアンモニウム化合物が原料に使われているという点です。そのためⅢ とⅣには、それが変化して副産物として「4-メチルイミダゾール」という物質ができてしまうのですが、実はこれに発がん性があるのです。アメリカ政府の国 家毒性プログラムによるマウスを使った実験で、4-メチルイミダゾール発がん性のあることが確認され、2007年には発がん性物質に指定されました。な お、カラメルⅠとカラメルⅡには、4-メチルイミダゾールは含まれていません。

 どのようにして4-メチルイミダゾールががんを発症させるかというと、その化学構造が動物や人間の遺伝子(DNA)の塩基に似ているためと考えられま す。特にチミンとシトシンに似ているのです。そのため、DNAの塩基の中に入り込んで構造を変えてしまい、その結果として細胞が突然変異を起こして、がん 化すると考えられるのです。

日本では野放し状態

 アメリカでは、カラメル色素の安全性が社会問題になりました。なぜなら、アメリカ人が大好きなコーラにカラメル色素が使われ、それに4-メチルイミダ ゾールが含まれていたからです。特に環境汚染に厳しい姿勢をとっているカリフォルニア州では、4-メチルイミダゾールの1日の摂取量を29マイクログラム (マイクロは100万分の1)と定めています。コーラ1缶(約355ミリリットル)には、その3倍を超える100マイクログラム以上が含まれていたため、 コーラを販売している米コカ・コーラと米ペプシコ製法を変えることで4-メチルイミダゾールの含有量を減らしたコーラを新たに発売したという経緯がある のです。

 日本では、この情報は一部のインターネットニュースで流れただけで、テレビや新聞などは取り上げませんでした。そのため大きな問題にはなりませんでした が、状況はアメリカと変わらないのです。つまり、市販のコーラには4-メチルイミダゾールが含まれ、その量はカリフォルニア州の基準を超えているというこ とです。日本では、以前と製法が変わっていないからです。

 前述したようにカラメル色素は4種類ありますが、食品に表示されているのは「カラメル色素」という言葉のみです。つまり、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのうちどれが使 われているのかわからず、市販の食品にカラメルⅢまたはカラメルⅣが使われていても、避けることができない状況にあるのです。

 日本では、まだカラメル色素の危険性はそれほど知られていません。そのためカラメル色素に対する警戒心が弱く、知らずに4-メチルイミダゾールを摂取している人がかなり多くいると考えられます。この状況は改善されるべきと考えます。

 消費者庁は、食品添加物の許認可事務を行っている厚生労働省に対して、カラメルⅢとⅣの使用を禁止するように働きかけるべきでしょう。それができないの であれば、各食品メーカーに対して、4種類あるカラメル色素のうちどれを使っているのか、きちんと表示させるようにすべきでしょう。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト

執念

一昨日、Windows7からWindows10へアップグレードした時に、DVDドライブが消えた というトラブルのお話をしましたが、この問題は久し振りに私の意地を見せた出来事でした。元来、メカ音痴でPCなどサッパリわからないし、何かあればS氏という専門家に聞いていました。ところが今回は何故か絶対に直してやろうと決意し、全て自分で調べて対処しました。殆どがYAHOO!などの検索サイトにいろいろなキーワードを入力して探す気の長いやり方で、ゴールは遥か彼方でなかなか届く気配もありません。兎に角訳の分からないコンピューター用語が理解できず、レジストリがどうのこうのとか頭がパニックになりました。しかし、初志貫徹で何回も何回も試行錯誤を繰り返し、訳のわからぬ専門用語も辞書で調べながら、丁度1週間でついに消えたDVDドライブのアイコンが復活したのです。まさに感動に一瞬~執念の為せる技だと自画自賛!束の間のPDを忘れてしまう程の幸福感を味わいました。

メネシット、ネオドパストンの作用機序・特徴

メネシット、ネオドパストンは脳内におけるドパミンを補充することによって、パーキンソン病の症状を改善する薬である。
パーキンソン病の主な症状は体がスムーズに動かないなどの運動機能障害である。これは神経伝達物質の1つで、運動機能に関与するドパミンと呼ばれる神経伝達物質が減少することによって生じる。
つまり、脳内におけるドパミンの量を増やすことがパーキンソン病の症状を改善する鍵となることが分かる。しかし、単純にドパミンを補充すれば良いというわけでもないのだ。
それには理由があり、その原因が血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)の存在である。血液脳関門というのは簡単に言うと“脳を異物から守ってくれるバリアー”だ。
なぜバリアーがあるかというと理由は簡単で、脳はヒトが生きる上で最も重要なものだからである。異物が入ってきて脳にダメージを与えられては困るのだ。
実はドパミン血液脳関門を通過することができない。そのため、脳まで到達することができず、パーキンソン病治療薬としての役割を果たせないのだ。
一方で、ドパミンの前駆物質あるレボドパ(L-ドパ)は血液脳関門を通過できるという特徴がある。 レボドパは血液脳関門を通過した後、脱炭酸酵素による代謝を受けてドパミンに変換され、脳へとようやく到達できるのようになるのである。
“レボドパは脱炭酸酵素によってドパミンに変換される”ということはこれで分かったと思う。しかし、問題なのは脱炭酸酵素は脳内のみに存在するわけではなく末梢にも存在するということだ。
つまり、これはレボドパが脳内へと到達する前に、末梢に存在する脱炭酸酵素によってドパミンに変換されてしまうことを意味する。その結果、ドパミン血液脳関門を通ることができず、脳に到達できないのだ。
脳に入ってからドパミンに変換されれば、パーキンソン病の症状を改善できる。しかし、脳内に到達する前にドパミンに変換されてしまうとまるで意味がないのである。
なぜなら、脳内におけるドパミンの量が増えないために、パーキンソン病の症状を全く改善できないからだ。
では、どうすればレボドパが末梢の脱炭酸酵素に阻害されずに、脳内に入ることができるのか?答えは簡単だ。血液脳関門を通らない脱炭酸酵素阻害薬を使えば良いのである。
その結果、末梢の脱炭酸酵素のみが阻害されることになり、末梢でレボドパがドパミンに変換されてしまって血液脳関門を通れないということは起こらなくなる。血液脳関門を通ってから無事にドパミンに変換されて脳に到達できるのだ。
メネシット、ネオドパストンはレボドパとカルビドパという2種類の成分が含まれた薬だ。このカルビドパという成分が“血液脳関門を通らず、末梢における脱炭酸酵素のみを阻害する”という特徴を持つのである。
レボドパ製剤
このような特徴をカルビドパは持つため、結果的にレボドパが効率的に脳へと移行することができるのである。カルビドパがレボドパの作用を最大限に発揮するために、サポートしているというイメージだ。
メネシット、ネオドパストンはレボドパとカルビドパの合剤で、脳内におけるドパミンの量を増やすことによって、パーキンソン病の症状を改善するのである。
◎メネシット、ネオドパストンの特徴
・配合されている脱炭酸酵素阻害薬による効果に違いはない
脱炭酸酵素阻害薬にはカルビドパとベンセラシドがある。カルビドパを配合しているレボドパ製剤がメネシットとネオドパストン、ベンセラシドを配合しているのがマドパー、イーシー・ドパール、ネオドパゾールだ。カルビドパとベンセラシドは臨床的に効果にほとんど差はないと言われている。
・レボドパ(L-ドパ)単体の1/5の量で同程度の効果を得られる
メネシット、ネオドパストンは脱炭酸酵素阻害薬であるカルビドパを配合しているため、レボドパ(L-ドパ)単剤での1/5の量で同程度の効果を得られると言われている。つまりレボドパ単剤服用に比べると、レボドパが効率よく脳内に到達できるのだ。
その結果、レボドパの服用量を少なくできる。実はレボドパはパーキンソン病に対する効果が非常に高い反面、悪心・嘔吐などの消化器系の副作用がでやすいという負の側面があるため、服用量は少ないほうが良い。
メネシット、ネオドパストンはカルビドパを配合することによりレボドパの服用量を少なくできるため、消化器系の副作用の発現を抑制することが可能なのである。(週刊 薬剤師日記)